時空戦士ゲート ホワイトサン   0話 諦めない事

―クロノスパイラル―

 

時空が渦を巻き、世界を呑み込み消滅させる

時空の歪みが形を持ち、それがバグと呼ばれ

 

またそれは、【バグ】と呼ばれ、またそれは【クロノスパイラル】

と言う場所となった

そんなバグが浮かぶ不可解な場所に彼女は居た

 

翡翠(ひすい)のような輝きを持つ緑色の長い髪を肩までのばし

研究者の証である白衣に身を包み

歯車を模した髪飾りをつけている

その手には、携帯機器のようなものが握られており

何かを見つめるその緑色の瞳は険しい

 

????「これが、本当にあなたの望んだ姿なのですか? ‥‥‥博士」

そう呟く彼女の視線の先には元の姿の面影もない化物がいた

 

体は、禍々しい黒い気体ようで、まるでこの世の負の思念体を思わせる

それは、獣のような耳を持ち、ずんぐりとした体と2本の巨大な腕に

赤く怪しく光る瞳の化物だった

 

【デモンスター】

腹部でドス黒く輝く絶望の星が全てを怒りのままに破壊し尽くす

そのためにそう呼ばれていた

 

そのおぞましい程に強い闇の力は、沢山の希望を奪い

ヒーローたちを闇へと葬った

だが、その絶望の象徴を前にしても

最後まで希望を捨てない一人のヒーローがいた

 

それこそが先程の彼女 時渡 始(ときわたり はじめ)である

彼女は、時空の力を宿す戦士 時空戦士ゲートとなり今まで

たった一人で戦ってきたのである

 

そんな彼女がこれまで戦う事が出来たのは、彼女の後輩にあたる少女

新田 扉(あらた とびら)がいたからである

 

彼女と、彼女の住む世界を守るために始は、これまでゲートとなり戦ってきた

そんな大切な彼女だからこそ、今回は嘘をついてまで置いてきたのだ

 

デモンスター「とうとうヒーローもお前だけになったな 貴様を倒せば、この世界は絶望で満ちる!」

 

始の姿を見つけるなり、デモンスターはそう言って絶望の星をひときわ輝かせた

 

始「負けられませんよ、かわいい後輩にドーナツを買っていかなきゃならないんですから」

デモンスター「ドーナツ? ハハハ、笑わせてくれる その後輩も世界もワシが消してやるのだぞ?」

 

始の事あbを聞いてデモンスターは顔をゆがめて笑ったかと思うと

直ぐに敵意に満ちた表情に変わる

 

始「だから‥‥‥」

始が一度うつむき、そう呟くと、手に握っていた携帯機器を腰にあてた

 

すると、それはベルトとなり、彼女の腰に装着され

【ゲートオン】と機械的な音声が流れる

 

始「そうは、させねぇって言ってるんですよ!」

先程までとは違って、荒い口調で彼女はそう言うと、ベルトに手をかざす

 

すると、ベルトにGの紋章が浮かび上がり

【カイモーン】と機械的な音声があたりに響いた

 

デモンスター「そうだ、そうこなくてはつまらん」

彼女の姿を見て、待ち望むように言うとデモンスターは不敵に笑みを浮かべる

 

ベルトから開門と書かれた四角いバリアのようなものが現れると

それは、始の体を通り抜けた

彼女の足下からバリアのような緑色の光が彼女を時空戦士に変えていく

 

全身が黒く、猫のような耳あり、胸部には心の文字が浮かび上がる

手や足に、模様のように緑色の光が走り

V字の緑色のラインが頭部に輝く

 

あっと言う間に、始めはゲートへと姿を変え

直ぐに彼女は空間を切り開き、自らの武器である剣を呼び出した

 

真っ黒い刀身に星のような光が無数に輝く剣、若干しなるように曲がったその剣こそ

ルナクレッセント

ゲートの愛用する剣である

 

デモンスター「さぁ、あの憎きサーガ無き今、貴様などおそるるにたりんわ!」

彼女が戦闘態勢に入ると、デモンスターが両手を広げて

手始めに波動を放った

 

ゲート「この程度!」

あたり一帯に波打つような波動が伝わると、ゲートは、それを剣で空間ごと切り裂いてかわした

 

デモンスター「ほう、ならこれはどうじゃ」

攻撃がかわされたのを見たデモンスターは、体からいくつも砲台を呼び出し

手当たり次第に乱射した

 

闇の弾丸の軌道は不規則で、それを避けるのはかなり困難である

しかし、ゲートは残像が見える程の速さでそれらをかわしていく

 

ゲート「悪いですが、出し惜しみは無しです」

周囲に弾丸が降り注ぐ中、彼女は片腕を振り上げ、緑色の光を放つ

 

すると、彼女のまわりから景色が灰色になり

降り注ぐ弾丸もピタリと止まった

ゲートが時間を止めたのである

 

彼女は、静止した時の中、空中を駆ける

当然、デモンスターの動きも止まっており、なんなく近づく事ができた

至近距離まで近づいた時、彼女はルナクレッセントとは異なるひときわ大きい剣をいくつも時空の彼方から呼び出した

 

デモンスターの弾丸をしのぐ程の剣が、空中に並べられていく

時を止めるという大技は何度も使えない

だから彼女は最初から勝負をかけたできるなら一撃で倒すくらいの気持ちで時間を止められるギリギリまで、ありったけの剣を呼び出し

ついに効果が切れると、止まっていた時間が動き出し、それまで待機していた剣が一斉に動き出した

 

デモンスター「な、なにぃ!?」

デモンスターが周囲の剣に気がついた時には既にいくつも剣が突き刺さっていた

デモンスター「さすが、時空戦士、見事じゃあぁあぁ」

 

全ての剣を受け、デモンスターは叫びながら、その巨体を沈めていく

体中から負の星を噴き上げ、徐々に消滅してゆく

それは、あまりにもあっけない決着だった

 

それでも、全力を出し切った彼女にとっては、疑いようのない勝利だった

彼女の姿が元に戻ると、彼女はその場で倒れた

 

????「せんぱい!」

倒れる始の元に一人の少女が駆け寄る

黒く長い、ツインテールの髪を地面にたらし、青い瞳をうるませるその少女こそ

始の大切な後輩、新田 扉である

 

始「とびら、どうしてここに」

目の前に突然現れた扉の姿に始は驚く

扉「先輩の帰りが遅くて、嫌な予感がして、それで、それで」

明らかに動揺した様子で答える扉を見て、始は彼女に笑いかけた

 

始「ごめんね、早くドーナツ買いに行かなきゃお店閉まっちゃうわね」

疲れきった声で言う始を見て扉は首を横に振った

扉「ドーナツは明日でもいいです それよりせんぱいが大事ですから」

 

始「‥‥‥そうね」

後輩の嬉しい言葉に始は、安心した様子で答える

扉が、始の体を支え、起こすと、ゆっくり歩き出した

 

始「!」

と、その時何かの気配が扉の背後に忍び寄るのを察知した始が急に扉を強く突き飛ばした

扉「っ、せんぱい、どうして!」

地面にしりもちをついた扉が驚きの表情で始を見る

次の瞬間

その扉の瞳孔が大きく開いた

 

始の体が真っ黒い剣に貫かれ、それは直ぐに彼女の体から引き抜かれた

扉「な、なんで、せんぱい」

 

????「ジジイの執念が、この俺を蘇らせた」

始から引き抜いた剣を担ぎ闇の中から男が姿を現す

片目に傷を持ち、片側が金髪でもう片方は黒髪という妙ないでたちのその男は

倒れた始からベルトだった携帯機器、ゲートライザーを奪った

 

タナトス「ついに手に入れたぞ、この力があれば、このタナトスこそが時の破壊者となり、あの憎き時の女神に復讐できる」

タナトスと名乗る男が扉に目を向けるより先に扉の体が緑色の光に包まれる

 

始「あなたは守るわ、行きなさい」

始が扉と体を接触させた時、既に持てる限りの時空の力を彼女に与え

転移の技をかけていた

 

戦いに勝てても世界は消える

だから、始は扉を守るために

世界から逃がす事を決めていた

 

タナトス「ヒーローでもないただの小娘一人逃げたところで何も変わらぬわ」

赤い眼を怪しく光らせタナトスはそう言うと、始のゲートライザーを手にその場から消えた

 

始「ヒーローは最後の最後まで諦めないものよ、とびら

あなたの可能性の扉はあなたが開きなさい」

 

扉の転移が終わる前に、始はそう言い残し、最後に笑った

扉「私、あきらめない! ぜったい先輩みたいなヒーローになってアイツを倒してみせるから!」

 

扉も拳を力一杯握り、始に宣言すると時空の彼方へ消えていった

 

 

――

 

????「キヒヒ、終わりあれば始まりあり、新たな謎が待つ場所でまた会いましょう」

????「誰と話してるのシャーロック、はやくお宝を探しにいきましょう?」

 

 

―0話諦めない事―完